BLOG高井戸行政書士事務所ブログ
【お酒】インターネットでお酒を売るには
最終更新日 2024年8月14日
インターネットでお酒を売るには「通信販売酒類小売業免許」という免許が必要となります。
1 通信販売酒類小売業免許とは
酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法の規定に基づき、販売場ごとに、その販売場の所在地の所轄税務署長から酒類販売業免許(以下「販売業免許」といいます。)を受ける必要があります。
販売場ごとに受ける必要があるとは、例えば、本店で販売業免許を受けている場合であっても、支店で酒類の販売業を行おうとする場合には、支店の所在地の所轄税務署長から新たに販売業免許を受ける必要があるということです。
販売業免許は、販売先や販売方法によって区分されていますが、このうち、通信販売(2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容、販売価格その他の条件をインターネット、カタログの送付等(注1)により提示し、郵便、電話その他の通信手段(注2)により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う販売をいいます。以下同じ。)によって酒類を小売することができる販売業免許が、「通信販売酒類小売業免許」です。(注3)
「通信販売酒類小売業免許」では、以下の小売を行うことはできないので留意が必要です。
①酒類の店頭小売(店頭において酒類の売買契約の申込みを受けること、又は、店頭において酒類を引き渡すことを行う販売をいいます。)を行うこと
②一の都道府県の消費者等のみを対象として小売を行うこと
①②の小売を行うには、 「通信販売酒類小売業免許」ではなく、「一般酒類小売業免許」の取得が必要となります。
販売業免許を受けないで酒類の販売業を行った場合には、酒税法上、1年以下の懲役又は 50万円以下の罰金に処されることとなっています。 また、偽りその他不正な行為により販売業免許を受けた場合など一定の要件に該当する場合には、販売業免許が取り消されることがあります。
(注1) 「カタログの送付等」とは、カタログの郵送等による配付又は備置きのほか、チラシ等の新聞折込み又は郵送等による配付若しくは備置き、雑誌又は新聞への広告掲載及びテレビ放送の利用等をいいます。
(注2) 「通信手段」とは、郵便等、電話機、ファクシミリ装置その他の通信機器若しくは情報処理の用に供する機器を利用する方法、電報又は預金若しくは貯金の口座に対する払込みをいいます。
(注3) 「通信販売を除く小売に限る。」旨の条件が付された一般酒類小売業免許等を受けている方が、新たに2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象とした「通信販売」により酒類を販売しようとする場合は「酒類販売業免許の条件緩和申出書」を提出し、条件の緩和を受ける必要があります。 ただし、県を跨がる(2都道府県以上の)電話やインターネット等による受注販売であっても、一般的に自己の販売場の近隣エリア(商圏)であれば、一般酒類小売業免許による販売が可能です。
(出典:通信販売酒類小売業免許申請の手引)
2 申請手続等
(1)申請
通信販売酒類小売業免許の申請は、酒税法令に定められた事項を記載した申請書等を、販売業免許を受けようとする販売場(申請販売場)の所在地の所轄税務署長に提出して行います。
(2)申請に当たり提出する書類
書類名 | 留意事項 |
①酒類販売業免許の免許要件誓約書 | 申請者、申請者の法定代理人、申請法人の役員及び申請販売場の支配人について、提出が必要です |
②申請者の履歴書 | 法人の場合には、監査役を含めた役員全員の職歴の記載が必要です |
③定款の写し | 申請者が法人の場合は提出が必要です |
④契約書等の写し | 土地、建物、設備等が賃貸借の場合は賃貸借契約書等の写し、建物 が未建築の場合は請負契約書等の写し、農地の場合は農地転用許可に 係る証明書等の写しの提出が必要です |
⑤地方税の納税証明書 | (1)都道府県及び(2)市区町村が発行する納税証明書で、申請者につき各種地方税について、 (イ)未納の税額がない旨 (ロ)2年以内に滞納処分を受けたことがない旨 の両方の証明がされたものの添付が必要です 法人については、証明事項に「特別法人事業税」を含める必要があります |
⑥最終事業年度以前3事業年度の財務 諸表 | 申請者が個人の場合には、収支計算書等の添付が必要 |
⑦土地及び建物の登記事項証明書 | 登記事項証明書は、全部事項証明書に限ります 申請販売場の建物が複数の土地(地番)にかかる場合には、その全ての地番に係る土地の登記事項証明書が必要 |
⑧その他参考となるべき書類 | 販売しようとする酒類についての説明書、酒類製造者が発行する通信販売の対象となる酒類である旨の証明書等の添付が必要です 酒類の通信販売における表示を明示したカタログ等(インターネット等によるものを含む。)のレイアウト図、申込書、納品書(案)等の添付が必要です |
⑨通信販売酒類小売業免許申請書チェック表 |
(3)申請手続の流れ
※酒類販売業免許申請書及び所定の添付書類の提出先は、酒類販売業免許を受けようとする販売場の所在地の所轄税務署となります。
※個別・具体的な相談がある場合の問合せ先は、当該所在地の所轄税務署を担当する酒類指導官となります。
(出典:通信販売酒類小売業免許申請の手引)
3 通信販売酒類小売業免許の要件
通信販売酒類小売業免許を受けるためには、申請者、申請者の法定代理人、申請法人の役員、申請販売場の支配人及び申請販売場が以下の免許の要件を満たしていることが必要です。
免許の要件を満たしていることについては、「酒類販売業免許の免許要件誓約書」(上記2(2)①)により誓約していただく必要があります。この誓約の内容を偽るなど不正行為があった場合には、その不正行為が、①審査段階で判明したときは拒否処分、②販売業免許の取得後に判明したときは取消処分の対象となります。
(1)人的要件
①申請者が酒類等の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けた者である場合には、取消処分を受けた日から3年を経過していること
② 申請者が酒類の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けたことがある法人のその取消原因があった日以前1年以内にその法人の業務を執行する役員であった者の場合には、その法人が取消処分を受けた日から3年を経過していること
③申請者が申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けたことがないこと
④申請者が国税又は地方税に関する法令等に違反して、罰金の刑に処せられ又は通告処分を受けた者である場合には、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過していること
⑤申請者が、二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(20歳未満の者に対する酒類の提供に係る部分に限る。)、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、刑法(傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合及び結集、脅迫又は背任の罪)又は暴力行為等処罰に関する法律の規定により、罰金刑に処せられた者である場合には、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
⑥申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
(2)場所的要件
正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとしていな いこと
具体的には、申請販売場が、製造免許を受けている酒類の製造場や販売業免許を受けている酒類の販売場、酒場又は料理店等と同一の場所でないことが必要となります。
(3)経営基礎要件
免許の申請者が破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合のほか、その経営の基礎が薄弱であると認められる場合に該当しないこと
(4)需給調整要件
酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合に該当しないこと
具体的には、販売できる酒類の範囲は、次の酒類に限ります。
①国産酒類のうち、次に該当する酒類
イ カタログ等の発行年月日の属する会計年度(4月1日から翌年3月31日までの期間をいいます。)の前会計年度における酒類の品目ごとの課税移出数量が、全て3,000 キロリットル未満である酒類製造者(特定製造者)が製造、販売する酒類。
ロ 地方の特産品等(製造委託者が所在する地方の特産品等に限ります。)を原料として、特定製造者以外の製造者に製造委託する酒類であり、かつ、当該酒類の一会計年度における製造委託者ごとの製造委託数量の合計が3,000キロリットル未満である酒類。
②輸入酒類 (輸入酒類については、酒類の品目や数量の制限はありません。)。
(出典:通信販売酒類小売業免許申請の手引)
4 通信販売酒類小売業免許の審査
(1)通信販売酒類小売業免許付与の審査
通信販売酒類小売業免許付与の審査は、税務署において受付順(審査順位)に、
☑申請書等の内容に不備がないか
☑申請者等及び申請販売場が販売業免許の要件に合致しているか
などの点について行われます。
必要に応じ、申請者や酒類販売管理者に選任を予定している方に来署を求められる場合や現地確認が行われる場合があります。
また、申請書等の提出後に決算期が到来し最新の財務諸表の内容を確認する必要がある場合など、追加的に書類を提出していただくことがあります。
(2)標準処理期間
通信販売酒類小売業免許申請の審査に必要な標準的な日数(標準処理期間)は、原則として、申請書等の提出のあった日の翌日から2か月以内となります。
ただし、添付が漏れている書類や審査を行う上で必要となる参考書類の追加提出又は申請書等の補正が必要となる場合には、その連絡をした日から、その書類の提出等があるまでの間の日数は、標準処理期間から除外されます。
(出典:通信販売酒類小売業免許申請の手引)
5 登録免許税の納付
通信販売酒類小売業免許が付与される場合、登録免許税を納付する必要があります。
税務署から「酒類販売業免許に伴う登録免許税の納付通知書」により通知されますので、税務署又は金融機関等で登録免許税を納付していただくことになります。
登録免許税の額は、免許1件につき3万円です。登録免許税の納付に係る領収証書は、「登録免許税の領収証書提出書」に貼付して、指定された期日までに税務署に提出する必要があります。
(注1)登録免許税法により領収証書の提出が義務付けられていますので、領収証書の現物の提出が必要です(写しの提出はできません。)。
(注2)「通信販売を除く小売に限る。」旨の条件が付された一般酒類小売業免許等の条件の緩和を受け、新たに2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象とした通信販売を行う場合は、登録免許税の納付は必要ありません。
(出典:通信販売酒類小売業免許申請の手引)
6 通信販売酒類小売業免許の通知
(1)通信販売酒類小売業免許の付与
通信販売酒類小売業免許を付与する旨の通知は、原則として、税務署に提出された「登録免許税の領収証書提出書」により登録免許税が納付されていることが確認された後に、「酒類販売業免許通知書」が交付又は送付されることにより行われます。
なお、審査の結果、免許の要件を満たさないため、免許が付与されない場合には、その旨が書面で通知されます。
(2)通信販売酒類小売業免許の条件
通信販売酒類小売業免許には、原則として、販売する酒類の範囲について制限が加えられるほか、販売方法について「2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象としてカタログ等(インターネット等によるものを含みます。)を使用して販売のための誘引行為を行い、通信手段により購入の申込みを受け、配達により商品の引渡しを行う小売販売で、かつ、酒類の購入申込者が20歳未満の者でないことを確認できる手段を講ずる場合に限る。」旨の条件が付されます。
(注) 販売場の周辺(販売場の所在する同一の都道府県内)の消費者のみを対象とする通信販売は、「通信販売を除く小売に限る。」旨の条件が付された一般酒類小売業免許が必要となります。
(3)通信販売酒類小売業免許者の氏名等の公表
販売業免許の付与等が行われた場合には、その免許者について、①免許等年月日、②申請等年月日、③免許者の氏名又は名称及び法人番号、④販売場の所在地、⑤免許等種類(卸小売の区分、一般・特殊免許等の区分)、⑥処理区分(新規、移転等)について、免許を受けた日の翌月末から国税庁により公表されます。
(出典:通信販売酒類小売業免許申請の手引)
お酒の免許の取得をお考えの際にはお気軽にご相談ください。