BLOG高井戸行政書士事務所ブログ

2024.7.29

【お酒】一般酒類小売業免許とは

最終更新日 2024年9月12日

今回は、よくお問い合わせをいただくお酒を販売するための手続についてです。特に、「一般酒類小売業免許」について触れたいと思います。

1 一般酒類小売業免許とは

酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法の規定に基づき、販売場ごとに、その販売場の所在地の所轄税務署長から酒類販売業免許を受ける必要があります。

よく「免許を受けると、どこででもお酒を売れるんですか?」というお問い合わせをいただきますが、「販売場ごと」に免許を受ける必要があります。

例えば、本店で販売業免許を受けている場合であっても、支店で酒類の販売業を行おうとする場合には、支店の所在地の所轄税務署長から新たに販売業免許を受ける必要があるということになります。

販売業免許は、販売先や販売方法によって区分されています。

このうち、販売場において、①消費者又は②酒場・料理店等の酒類を取り扱う接客業者等に対し、原則として全ての品目の酒類を小売することができる販売業免許が、「一般酒類小売業免許」です。

「一般酒類小売業免許」で他の酒類販売業者に対して酒類を販売することはできません。

よく「酒場・料理店等にお酒を販売するには『酒類卸売業免許』が必要必要ですか?」とのご質問をいただきますが、酒場・料理店等は一般消費者扱いされるので「一般酒類小売業免許」を持っていれば販売できます。

販売業免許を受けないで酒類の販売業を行った場合には、酒税法上、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることとなっています(酒税法第56条第1項第1号)。 また、偽りその他不正な行為により販売業免許を受けた場合など一定の要件に該当する場合には、販売業免許が取り消されることがあります(酒税法第14条)。

2 申請手続等

(1)申請

一般酒類小売業免許の申請は、酒税法令に定められた事項を記載した申請書等を、販売業免許を受けようとする販売場の所在地の所轄税務署長に提出して行います。

(2)申請に当たり提出する書類

申請書を提出する場合には、所定の添付書類を同時に提出する必要があります。

書類名留意事項
①酒類販売業免許の免許要件誓約書申請者、申請者の法定代理人、申請法人の役員及び申請販売場の支配人について、提出が必要
②申請者の履歴書法人の場合には、監査役を含めた役員全員の職歴の記載が必要
③定款の写し申請者が法人の場合は提出が必要
④地方税の納税証明書(1)都道府県及び(2)市区町村が発行する納税証明書で、申請者につき各種地方税について、
(イ)未納の税額がない旨
(ロ)2年以内に滞納処分を受けたことがない旨
の両方の証明がされたものを添付。
法人については、証明事項に「特別法人事業税」を含める
⑤契約書等の写し土地、建物、設備等が賃貸借の場合は賃貸借契約書等の写し、建物 が未建築の場合は請負契約書等の写し、農地の場合は農地転用許可に 係る証明書等の写しの提出が必要
⑥最終事業年度以前3事業年度の財務 諸表申請者が個人の場合には、収支計算書等の添付が必要
⑦土地及び建物の登記事項証明書登記事項証明書は、全部事項証明書に限る
申請販売場の建物が複数の土地(地番)にかかる場合には、その全ての地番に係る土地の登記事項証明書が必要
登記情報提供サービスによる登記情報を印刷したものは、申請等の添付書類とすることはできません。
⑧一般酒類小売業免許申請書チェック表
3 一般酒類小売業免許の要件

(1)人的要件

①申請者が酒類等の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けた者である場合には、取消処分を受けた日から3年を経過していること

②申請者が酒類の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けたことがある法人のその取消原因があった日以前1年内にその法人の業務を執行する役員であった者の場合には、その法人が取消処分を受けた日から3年を経過していること

③申請者が申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けたことがないこと

④申請者が国税又は地方税に関する法令等に違反して、罰金の刑に処せられ又は通告処分を受けた者である場合には、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過していること

⑤申請者が、二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(20歳未満の者に対する酒類の提供に係る部分に限る。)、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、刑法(傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合及び結集、脅迫又は背任の罪)又は暴力行為等処罰に関する法律の規定により、罰金刑に処せられた者である場合には、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること

⑥申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること

(2)場所的要件

正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとしていないこと

(3)経営基礎要件

免許の申請者が破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合のほか、その経営の基礎 が薄弱であると認められる場合に該当しないこと

(4)需給調整要件

酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合に該当しないこと

4 一般酒類小売業免許の審査

(1)一般酒類小売業免許の審査

一般酒類小売業免許付与の審査は、税務署において受付順(審査順位)に、申請書等の内容に不備がないか、申請者等及び申請販売場が販売業免許の要件に合致しているかなどの点について行われます。

必要に応じ、申請者や酒類販売管理者に選任を予定している方が来署を求められる場合や現地確認が行われる場合があります。

また、追加的に書類の提出を求められる場合があります。

(2)標準処理期間

一般酒類小売業免許申請の審査に必要な標準的な日数(標準処理期間)は、原則として、申請書等の提出のあった日の翌日から2か月以内となります。

ただし、添付が漏れている書類や審査を行う上で必要となる参考書類の追加提出又は申請書等の補正が必要となる場合には、その連絡をした日から、その書類の提出等があるまでの間の日数は、標準処理期間から除外されます。

5 登録免許税の納付

一般酒類小売業免許が付与される場合、登録免許税を納付する必要があります。税務署から「酒類販売業免許に伴う登録免許税の納付通知書」による通知がありますので、税務署又は金融機関等で登録免許税を納付する必要があります。

登録免許税の額は、免許1件につき3万円です。登録免許税の納付に係る領収証書は、「登録免許税の領収証書提出書」に貼付して、指定された期日までに税務署に提出する必要があります。

6 一般酒類小売業免許の通知

(1)一般酒類小売業免許の付与

一般酒類小売業免許を付与する旨の通知は、原則として、税務署に提出された「登録免許税の領収証書提出書」により登録免許税が納付されていることが確認された上で、「酒類販売業免許通知書」が交付又は送付されることにより行われます。 なお、審査の結果、免許の要件を満たさないため、免許の付与ができない場合には、その旨が書面で通知されます。

(2)一般酒類小売業免許の条件

一般酒類小売業免許には、原則として、販売方法について「通信販売を除く小売に限る。」旨の条件が付されます。

(3)一般酒類小売業免許者の氏名等の公表

国税庁が販売業免許の付与等を行った場合には、その免許者の、①免許等年月日、②申請等年月日、③免許者の氏名又は名称及び法人番号、④販売場の所在地、⑤免許等種類(卸小売の区分、一般・特殊免許等の区分)、⑥処理区分(新規、移転等)について、免許を受けた日の翌月末から公表されます。

一般酒類小売業免許の取得をお考えの際には、お気軽にご相談ください。